気まぐれに、思ったままに。

とあるポスドクの、つぶやき 兼 備忘録

思考の切り替え

一昨日、久々に仲の良い先生に話を聞いてもらってきた。というのも、一番気分がどんよりしていた際にメールを返信したため、近況報告に暗めな表現を多用していたようで、普通に心配された。大丈夫か、相談乗るよ?と返信をもらうという…いつもありがとうございます…。

先生方は、キャリア的にも年齢的にも、自分より遥かに様々な経験を積んでいらっしゃる人生の先輩方だ。そこに尊敬や憧れ等のフィルターも掛かり、(他の研究室の先輩や卒業した先輩方も含め)指導教員ほど他の先生方は近くにいるわけでもないので、誰から見てもわかるほど大きな欠点でない限り、先生方がもつ研究者としての欠点、一人の人間としての欠点は、私にはなかなか見えてこない。

 

生活リズムを作るのが苦手過ぎて、午前中に予定や約束が有るとかなり大きなストレスを感じる私は、約束をした10時半になんとか遅刻せずに居室に伺えたので、一安心した。そして、最初に朝起きられて安心したことと、朝起きるのが難しく感じることを話した。話をしに行った先生は、研究の内容的に明け方前から測定を開始するような実験を行うこともある方なので、私が朝起きるのが苦手な話は先生は既にご存知だが、軽く流されると思っていた。

ところが。朝起きるのは難しいよ、と同意してくださった。息子が小学校行ったりするし、朝ご飯もあるし、午前中に講義があったりするし、色んな理由があるから頑張って起きてるけどさー、と。結構驚いた。いや、私に気を遣ってくださっただけかもしれないけど。あんなバイタリティ溢れる先生も、朝って起きるの大変だと思うのか。ふむ。

 

今まで私は、世間の多くの人々のように普通に生活が出来ない、ということを悩んできた。朝起きて、日中活動して、夜帰って風呂に入り、寝る。これを大体同じような時間帯に毎日繰り返し行うことが出来ないということ。出張とか、飲み会があったりとか、そういうイレギュラーを除いたとしても、出来ない。実家にいた頃は、両親の手助けが在ったから成り立っていたのだと、一人暮らしを初めて思い知ったのだ。こんな根本的なことが私はできないのか、と最初はかなり衝撃的だったし、今でも悩みの一つである。

研究室には、毎日同じように生活して、計画をきちんと立てて実験を行い、研究を進めながらも適度に遊んでいる後輩もいる。本当に尊敬する。世の中全員が彼のようでないにしても、それでも皆ある程度は社会的に生きている。だから、それが出来ない私はポンコツだと思っていた。

しかしである。家庭を持ち、講義も行い、学生も指導している先生も、朝起きるのは難しいことらしい。そうなのか。

私は今まで、自分の想像以上に自分が出来ないことが多く、自分がこのくらいはできるだろうと考える理想よりも現実が遥かに劣るという事実に、ショックを受けて落ち込み、悩んできた。この悩みの前提には、「世の中の大半の人が普通に実行できる簡単なこと」が存在する。そして、それを自分は簡単にこなせない、理想通りのクオリティでこなせないからショックなのだ。しかし、この前提は本当に正しいのだろうか?

 

実は皆、私ほどではないかもしれないけれど、日々生きることに必死なのかもしれない。実は、同じような時間帯に寝て起きるというごく普通の生活を送ることは、簡単なように見えて難しいのかもしれない。最初は皆、難しいことなのかもしれない。

就業時刻、講義の開始時刻、公共交通機関の時刻表、研究室のコアタイム、そういった社会にあるルールによって縛られ、求められるからこそ、否が応でも生活習慣の一つとして繰り返すことになり、習慣化されて、自ずとできるようになる。ということなのかもしれない。

今の私は、研究室に先生方が設定するコアタイムも存在せず、家から大学も5-15分程度と近いため、いつでも来られていつでも帰れる。D論の締切や、学会の締切、そういった締切はあるが、基本的には平日も土日も全て自分でコントロールして、何にどのくらい時間を割くか考えて、研究を進めていく必要がある。とにかく自由で、自由だからこそ手に余っている、そんな状況だ。これはもしかして、スキルほぼ0で難易度が結構高いことを何とかこなしている(ように見せかけている)状態なのかもしれない。と言ってももう2年半以上が経過しているのだから、スキル0から少しは成長したと思いたいが。

 

「こんなことも」できないなんて、という形で表せる悩みが多かったが、最初は皆そんなものなのかもしれない。そして、「こんなこと」と思っていることは、意外と簡単なことではないのかもしれない。そうやって思考を切り替えてみると、簡単でないなら工夫してみるかと思えてくる。

普通にこなそうと思ってこなせないなら、やっぱり考えて取り組むしか無いのだろう。慣れてくれば考えることも減るし、マニュアル化された状態が習慣化された状態ということだろう。得意不得意は誰にでもあるのだし。もう少し気楽に頑張りたいものだ。

一昨日、先生とのお話で得られたことは他にもある、備忘録としてまとめておこう。